「皆勤手当」を支給している会社も多いと思います。例えば、「皆勤手当=月額○○円とする。」などと就業規則に明記して、無遅刻・無欠勤・無早退だった場合に月額分支給するといった具合です。月額で支給される皆勤手当と割増賃金の関係について解説します。
割増賃金を計算する上で、この月額で支給される「皆勤手当(精勤手当)」を計算の基礎にするかどうかで悩まれる経営者の方もいると思います。そもそも割増賃金の計算する上で除外できる賃金というのは、労働基準法で決められています。月額で支給される皆勤手当はその除外できる賃金に入っていないため、除外することができません。
労働基準法で認められている割増賃金の計算から除外できる賃金・手当
したがって、従業員が皆勤して、「皆勤手当」が支給される場合には、この金額を含めて割増賃金を計算しなければなりません。もちろん、欠勤などの理由によりその月に皆勤手当が支給されなければその金額を含める必要はありません。
ただし、それだと給与計算の事務手続き上、月ごとに割増賃金の算定基礎額を変更するのが面倒になってしまうため、どんな場合でも皆勤手当を含んだ算定基礎額で割増賃金を計算する会社も多いようです。
会社は、従業員に時間外労働(残業)をさせたり、休日出勤や深夜勤務をさせた時は、
割増賃金を支払わなければなりません。
ここでいう割増賃金の対象となる時間外労働とは、
労働基準法で定められた労働時間1週40時間、1日8時間超えた時間のことをいいます。
これを「法定労働時間外」と呼びます。
会社によっては1日の労働時間が7時間だったり、7時間30分であったりする会社も
あると思いますが、その場合、1日8時間になるまでの時間のことは
「所定労働時間外」と呼びます。
■就業規則などで法定労働時間(8時間)に達しない所定労働時間を定めている場合
例えば、7時であったり7時間30分であったりする会社の場合、その所定労働時間を超えても、
法定労働時間(8時間)に達するまでは、割増賃金を支払う必要はありません。
しかし、この場合割増賃金(125%や135%)は必要ありませんが、
働いた時間分の通常賃金(100%)は払う必要があります。
※上記記載例に関しては、あくまでも完全週休2日制の場合を想定していますので、
変形労働時間制を採用している会社の場合には、違ってくることもあります。
■変形労働時間制を採用している会社
変形労働時間を採用している場合には、その制度下で認められる範囲内では、
法定労働時間を超えても割増賃金を支払う必要ありません。
詳しくは省略いたしますが、1ヵ月単位の変形労働時間制や1年単位の変形労働時間制
等の場合には、一定の条件をクリアすれば1日8時間を超えて働くことも可能となります。
■時間外労働が翌日の所定労働時間に及んだ場合
時間外労働が翌日の所定労働時間に及んだ場合には、翌日の始業時刻までが割増賃金の対象になります。
■管理監督者役職者の場合
労働基準法で認められている管理監督者などの場合には、労働時間、休日、休憩の規定が適用除外とされています。
したがって、時間外・休日労働の割増賃金は支払義務は発生しないこととなっています。
ただし、労働基準法で言う管理監督者の対象は、かなり高い基準があると言われています。
部長だから、課長だから、店長だからと言って必ずしも管理監督者にはなりませんのでご注意ください。
割増賃金・深夜手当の計算方法
割増賃金の額は、次の割増率を乗じて計算します。
■時間外労働 25%
■深夜業 25%
■法定休日労働 35%
■時間外+深夜業 50%
ただし、深夜手当・夜勤手当などと称して手当が支給されている場合、
夜勤手当があらかじめ深夜労働の割増賃金分も含んでいることもありますが、
そのような場合、通常、就業規則等で以下のように明記されていることが必要になります。
(例)「夜勤手当は、○○時間分の深夜割増賃金の代わりとして支給するものである。」
■時間外労働が休日におよんだ場合
平日の時間外労働がそのまま休日に及んだ場合には、
その休日が「所定休日」なのか「法定休日」なのかによって割増賃金の計算の仕方も変わってきます。
つまり、会社が決めている所定休日ならば、休日である翌日に及んだとしてもその時間は、
時間外労働としてとらえ、翌朝5時までは「時間外労働割増25%+深夜割増 25%」の計算となります。
一方、その休日が「法定休日」ならば、午前0時を超えた時点で「休日労働」となり、
翌朝5時までは「休日労働割増 35%+深夜割増 25%」の扱いになります。
これは、労働基準法でいう「法定休日」とは「午前0時から午後12時まで」のことを意味するからです。
就業規則等で「○曜日を法定休日とする。」など明記している場合や
同じ週に休みが取れていない場合には注意が必要です。
※令和4年7月現在、中小企業には適用が猶予されますが、1ヵ月60時間を超える法定時間外労働に対しては、使用者は50%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならないことになっていますのでご注意ください。
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